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東京競売ウォッチ

2026年09月29日

第809回 競売ビルでは賃借権評価減の考慮無し

 都心の築古商業ビルについては、更地化し、建替えしてバリューアップを図る場合が多い。従ってその場合、ビルに賃借権があれば、賃借権者への立退き費用が売買価格から差し引かれることになる。立退料は月額家賃の3年分に及ぶこともあり、大きなコストを買主は見込むことになる。ただし、その賃借権が定期借家契約であれば、その賃貸期限到来で無償の明渡が可能であるので、売値からの立退き費用控除はほぼなくなる。

 さて、9月9日開札において「秋葉原」駅から東へ徒歩2~3分のところにある商業ビルが対象になった。土地は南側で幅員4.5mの公道に面する約59坪で建物は築53年で鉄筋コンクリート造5階建の延床面積約196坪である。所有会社が使用する約5坪以外全館賃貸にされていて、全て今回の競売で競落者が引き継ぐ長期賃借権である。

 ただし、唯一3階のテナントだけが定期借家権の契約になっている。もしこのビルが建替え前提の任意売却となれば現在の全体収受年賃料約3900万円のうち定期借家部分を除いた3000万円以上の年間賃収から、1億円程度の明渡費用が必要だろう。しかし、競売の評価書における積算評価においてはこの借家権相当額の減額(定期借家権部分除く)はなされていない。競売評価においてはあくまで賃貸続行を前提とした評価となっている。

 ただし築年が古いために、積算評価では建物評価が小さくなっていて、収益還元法においては直接還元法が採用されているが、その還元率が高め(年7.2%)に設定されている。築古競売ビルの評価手法の特殊性と言える。ちなみにこのビルは売却基準価額2億9686万円に対し入札24本とこの日一番の入札を集め最高価6億500万円にて競落されていった。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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