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東京競売ウォッチ

2013年10月22日

第202回 桜新町の借地権付建物

 競売不動産には、借地権付建物が一般市場に比較し、多くみられる。これは借地権付建物が、任意売却されにくいことにある。任意売却されにくい大きな要因に、地主の譲渡承諾を得なければ売却できないということがある。

 10月3日開札で、東急田園都市線「桜新町」駅から約19分に立地する、借地権付建物が対象になった。建物は築18年の鉄筋コンクリート造4階建てで、延床面積は約61坪である。借地は北東側で幅員約15m、南東側で幅員約6mのそれぞれ公道に面する、約28坪である。

 ところで、この土地の所有者は近隣のお寺であり、建物所有者の会社に対し、土地賃貸借契約の解除の意思がある。これについては、借地人、地主双方の意見が未だ対立しているものの、裁判の判決もあって、競売の評価では借地権を認めている。

 こういう状態では、おそらく競売前の任意売却実施にあたって、地主であるお寺の譲渡承諾は得られなかったと思われる。

 結果として競売に移行したものの、競落後、円滑に土地賃貸借契約の名義変更がなされるか否かは不透明である。仮に地主との協議が不調であれば、裁判所への借地権譲受許可の申立てを行わねばならない。高級住宅地にある好立地の物件であるが、再販目的での競落は、こういう地主との関係を考えるとリスクが高い。

 競落結果を見ると、売却基準価額2,576万円に対し、2,855万円にて個人が落札している。不動産会社は強気の応札ができなかったのであろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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