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東京競売ウォッチ

2010年12月6日

第69回再建築不可の物件

 東京地裁の競売市場はマンションを中心に過熱ともいうべき、活況を呈しているが、その中において、逆に入札低調な物件とは、どんなものだろうか。

 11月25日開札において、入札がわずか1本で、売却基準価額を下回る落札価格であった物件が3物件あった。そのうちの一つは田園都市線「用賀」駅から2.3kmに立地する戸建てであった。土地は約334坪あり、建物は築50年が経過している木造2階建て、延約85坪である。この物件の売却基準価額は1億456万円であった。世田谷の住宅地で坪31万円強であり、驚異の安さに映る。しかし、実際には入札は1件で、しかも落札価格は買受可能価額をわずかに上回る8,407万円であった。

 なぜこんなに安いのか、またこんなに競落価格が伸びないのか、それはこの土地の形状に理由がある。この土地は幅員4.5mの公道に面するものの、路地状敷地で、路地状部分は幅員が約2m、長さ約55mである。

 この形状では東京都安全条例上、再建築ができない(幅員3mが必要)。そんなわけで、売却基準価額設定にあたっては、この条件のため約60%の減額を施している。しかしながら、それでも高かったようだ。結局、不動産業者では手が出せず、個人が落札していった。

 ただ一方で、同じ日に再建築不可の江東区のマンション1棟には38本の入札があり、売却基準価額の3倍を超える価格で落札されている。現状で収益を生んでいるためであろう。再建築不可も一概には入札低調とは限らない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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