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東京競売ウォッチ

2011年12月20日

第118回 湾岸タワーマンション

 東日本大震災では、浦安地域に代表される土地の液状化が大きな問題になった。浦安以外の同じ湾岸エリアでも、多少なりとも液状化は危惧された。

 11月17日開札では、湾岸エリアの豊洲地区に建つ「シティタワーズ豊洲ザ・ツイン」の部屋が対象となっており、その結果に目を引かれた。

 この物件の竣工は一昨年の2月であり、新築に近い。対象住戸は専有面積が約27坪で、売却基準価額は4,089万円であった。

 これに対し、入札は16本あり、競落価格は6,270万円弱で、競落者は再販業者ではなく、個人であった。

 分譲当時、注目を集めた人気物件だけに再販業者が商品仕入れとして、落札するかとも思われたが、結果として個人の入札価格には届かなかった。

 さて、競落価格は専有面積1坪の単価が230万円強である。これは、現在同棟内で販売されている部屋が専有面積1坪あたり販売単価280万円を超えるものが多い中で、かなり割安のようにも思える。しかし、問題は現在一般市場で販売されている物件在庫の量が多いことである。

 つまり、販売価格はあくまで売主の希望価格であり、成約する実際の価格ではない。再販業者としては、競合物件の多さから、入札価格を低めに見ざるを得なかったのだろう。

 また、販売在庫が多いのは、やはり先の震災の影響であろう。建物自体に限らず、豊洲という地域についての液状化などのリスクを所有者が感じた結果だと思われる。

 今後も、このような湾岸エリアのタワーマンションは、リスクを取れない再販業者に代わって、実需の個人が競落するケースもあろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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