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東京競売ウォッチ

2023年03月21日

第642回 民事執行法63条2項1号の申出物件

 競売では競売を申立てた場合に売却基準価額の2割引である買受可能価額(実質的な最低売却価格)で売却された場合に申立て債権者に配当が回らないような事態となると競売が取り消されることになっている。しかし、それでも競売を裁判所に進めてもらいたい場合、民事執行法63条2項の申出をし債権者が競売を続行する方法がある。この場合債権者自身に配当が回る水準の価格を裁判所に申出、そこに入札者の入札価格が達しなかった場合は債権者自らがその申出額で購入することにするのである。この申出額は競売公告に明示され、入札者はその額以上でなければ無効な入札となる。

 3月1日開札では東武東上線「東武練馬」駅徒歩約11分に立地する一戸建てが開札対象であったが、この物件が法63条2項1号の申出額設定の物件であった。土地は約22坪でその上に古家が建っている。また土地が敷地延長の形状であり、間口狭小で再建築不可の物件である。この物件の売却基準価額は1231万円であったが、法63条2項1号の申出額は2302万円であった。入札結果は応札が無く、特別売却に回った。おそらく再建築不可であることから2302万円で入手しても事業として採算が合わないとの判断から入札を見送られたのだろう。今後この物件は特別売却にて売却されなければ、競売申立て債権者が物件を引き取ることになる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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