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東京競売ウォッチ

2012年2月7日

第122回 木場の戸建て築10年

 2012年初めての開札が1月19日行われ、昨年と変わらず高い売却率であった。

 その中にあって、最高の入札を集めたのは、地下鉄東西線「木場」駅徒歩約5分に立地する一戸建てであった。その戸建ては土地が西側で幅員5.45mの公道に面した約15.6坪で、建物は築10年弱の木造3階建て、4LDK(延床面積約24.5坪)である。

 この物件の売却基準価額は1,819万円であったが、これに対し入札40本が集まり、最高価3,400万円にて個人が落札していった。

 また、この落札の次順位資格対象の入札は3,340万円であったが、これもまた個人の入札であった。

 なぜ個人の入札者が落札者及び次順位資格者になったか、それは、この物件が空家であったことにあろう。現況調査報告者において、空家と明記されていれば、その後の状況が変わらない限り、明渡はかなり容易である。さらに、こういった物件については、個人が買受代金を住宅ローンにて支払うことも比較的しやすいと思われる。

 競売の代金の納付については、事前に「民事執行法82条2項の申出」という手続きを行えば、買受人への所有権の移転の(嘱託)登記と金融機関の抵当権等の設定登記を行うことが可能である。よって、住宅ローンの実行金にて代金納付は技術的に可能である。

 しかし金融機関は、競売不動産への住宅ローン適用は積極的ではない。その理由の一つが物件の占有問題なのである。したがって、占有障害が小さい住宅は、この住宅ローンの観点からも、個人落札が多いということになろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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