リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2012年9月18日

第152回 共有持分のみの売却

 競売市場ならではの特殊物件は、いくつかあるが、一不動産の共有持分のみの売却もその一つである。

 8月30日開札では、JR京葉線「八丁堀」駅徒歩約3分に立地する専有面積約16.5坪の2LDKの部屋の2分の1の共有持分が競売対象になった。

 この物件はそもそも新築時に夫婦2人で半々の持分にて購入したものであり、住宅金融公庫などの住宅融資で通常とおり購入している。

 しかし、その後、夫の方が税金を滞納し始め、彼の持分に東京都などから差押があり、遂には破産してしまっている。この間、住宅融資の方は、返済に対する延滞などなかったようで、金融機関からの差押はない。おそらく残債もかなり少なくなっているだろう。

 そんな中で、今般競売に付されたのは破産管財人の申立によるものであった。おそらく破産者の共有持分の換金処分について、共有の相手方と協議がまとまらなかったことから行われたのではないだろうか。

 そして、競売申立後も破産管財人と共有者との間で共有持分の処分、具体的には物件全体を売却して換金する方法や、破産者の共有持分を、その相手方の共有者が買い取るなど協議したと思われる。

 結局、第三者の競落による権利関係の複雑化を相手方共有者は恐れたのであろうか、ぎりぎりで、破産管財人との協議・取引が成立したようだ。本物件は開札の3日前に取り下げがなされた。

 競売申立が任意解決を推進した例だと言えよう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber


Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.