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東京競売ウォッチ

2017年11月21日

第393回 共有持分戸建に入札15本

 競売市場には一般市場でお目に掛からない物件が散見される。その中で共有持分の競売というものがある。

 平成29年11月9日開札では、東武東上線「中板橋」駅徒歩約3分に立地する1戸建がその対象の土地と建物の共有持分3分の1のみの競売があった。その物件は土地が北西側で幅員約8mの公道に面した約16坪で、建物は築49年の木造3階建、延床面積約26坪である。1階は店舗(空き家同然)その他が住居で、競売対象外の共有持分を有する者らが占有している。売却基準価額は528万円であったが、これに対し15本の入札があり、最高価888万円強にて競落されていった。

 こういった共有持分を競落した者は、売却対象外の相手方共有者が占有する場合、引渡命令は申し立てられない。本件も占有しているのは相手方共有者らであるため、強制的明渡は行えない。従って競落者は通常は相手方共有者に有する共有持分の譲渡と建物明渡を受けるか、もしくは逆に競落持分を買い戻して頂くかを交渉することになろう。しかし、こういった交渉が纏まらない場合には、相手方共有者を相手に共有物分割請求訴訟を提起した上、土地建物全体を競売に付することになる。競落者は全体が他者に競落されれば、その競落代金の3分の1の配当を受けることになる。ただ本件共有持分の競落価格は売却基準価額の約7割上乗せと、強気の入札であった。従って全体競売になれば旨味が小さい。競落者としては、できれば任意交渉で纏めたいところだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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