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東京競売ウォッチ

2016年3月29日

第316回 銀座の中銀カプセルタワー

 東京圏ではマンションのストックは年々増加しており、老朽化も進んでいる。そんな中、政府はマンション建替円滑化法を制定し、建替えをしやすい法整備を実行した。また昨今、さらに建替えのハードルを下げる法改正の動きも見られる。

 さて、3月10日開札では、マスコミなどで話題となっているマンションの1部屋が開札となった。その物件は中央区銀座8丁目に立地する「中銀カプセルタワービル」である。この物件は有名建築家である故人の黒川紀章氏の設計で、44年前に建設された。立方体のカプセルを積み上げた方法により建設されたユニークなマンションである。しかし、近年老朽化が激しく、各種配管の不具合や雨漏りも多くの箇所で起こっているようだ。このマンションの区分所有者間では、建替えか、歴史的建造物として改修・保存かで意見が割れているようである。

 そんな中、7階に位置する専有面積3坪弱のワンルームが開札対象になった。売却基準価額は管理費等の滞納額が約90万円あるところから、1万円という最低の設定であった。しかし、債権者の買受申出額(民事執行法63条2項)が設定されているので、事実上最低売却価格は61万円であった。

 そこに、この日41本の入札が集まり、最高価477万円強にて落札されていった。実際に利用できる状態にできるのか不明であるが、銀座にあるある意味希少物件であったことで、大量の入札があったようだ。このマンションの今後の成り行きが。気になるところである。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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