リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2010年10月5日

第60回低グロス実需マンション

 現在、中古マンションでも低グロスの実需向けマンションの取引が活発であるという話は不動産業者からよく聞く。新築物件の供給が少ないことが原因となっているかとは思うが、フラット35などの住宅ローンの条件が良いことや、住宅取得資金贈与や相続時精算課税制度などの影響もあるように思う。

 これを受けて、競売でも低グロスの実需マンションへの入札は活発化している。9月14日開札で1番人気であったのが半蔵門線「住吉」駅徒歩10分に立地する専有面積約17坪で、3DKのファミリーマンションである。売却基準価額658万円に対して入札は47本を数え、最高価1,736万円で、再販業者が落札していった。

 マンションで大量入札を集めるのは、従来城西、城南地域の物件や、築浅の物件であったが、本物件に関しては築年が新耐震基準前の昭和55年と古く、さらに城東地域の物件であり、しかも本物件の住戸位置は1階である。いかに再販業者の仕入れの狙い目が低グロスのファミリーマンションに集中しているかが分かる。

 一方でこの日、JR総武中央線「平井」駅徒歩8分に立地する11坪強の狭小敷地の戸建てが開札になった。

 建物が築42年と古いが、再建築も可能であるので、売却基準価額596万円は低い感じがしたが、結果集まった入札は8本で、最高価862万円にて落札されていった。

 先のマンションに比して低グロスであっても、人気が低い。これは築古戸建ての場合は改装して商品にならないことが予想され、建替えも、狭小敷地ゆえプランが建てにくい。また、狭小敷地は住宅ローンが付きにくいという弱点もある。

 こういった戸建ては商品化に一工夫必要であるので、マンションの再販業者は手が出せないのだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber

コラム一覧

山田純男 東京競売ウォッチ

2024年05月14日



Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.