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東京競売ウォッチ

2017年6月20日

第373回 借地権の古アパートも高水準落札

 昨今、地方銀行などの貸家建設のための融資が急増していることに金融庁が警鐘を鳴らしている。人口減少の中で、賃貸需要がそれほど伸長しないことに対して供給が過多ではないか、ということである。しかし、一方で人手不足を背景に利便性の高い単身向け住宅のニーズは、特に低廉賃料の物件などを中心に堅調である側面も見せている。

 そんな中、5月25日開札では、借地権の古アパートが高い上乗せ率で競落されたのに目を引かれた。その物件は東京メトロ丸ノ内線「新高円寺」駅徒歩約2分の好立地であった。しかし、建物は築年年月日不詳ながら、築60年以上は経過している古さで、木造2階建て、1Kが4戸、延床面積約40坪である。借地権対象の土地は約33坪あり、幅員4m未満の2項道路に面している。

 この物件の売却基準価額は1468万円であったが、これに対し入札は6本集まり、最高価2386万円にて競落されていった。競落者は、この土地の地主であったので、6割を超える上乗せ率も理解できる。しかし、次順位の入札者が2100万円で入札している。この次順位入札者は個人であったが、投資対象として魅力を感じ応札したのであろう。やはり立地の魅力と言えるが、木造の古アパートでしかも借地権付建物であれば、賃貸した場合の減価償却費が大きいというメリットも考え入札されたのかもしれない。

 結果的に競落した地主の入札価格設定は見事であったということだろう。いずれにしろ昨今、手頃な収益不動産として、古アパートも立地次第で人気が集まる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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