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東京競売ウォッチ

2022年11月1日

第623回 相続がらみ形式競売が目立つ

 一棟物という種別の物件はこのところ競売市場にあまり見ない。収益物件への購買意欲が高く、市場での取引価格も高い状況である。従って昨今は仮に所有者・債務者が融資返済を延滞しても物件売却によって債務返済は十分可能であることから競売市場には登場しないのである。

 そんな中で収益物件が一般市場ではなく競売市場にて売却されるケースで多いのが共有物分割請求訴訟に基づく換価(形式)競売である。この換価競売も事件番号では債権回収の任意競売と同じ(ケ)事件なので、一見見分けがつかない。

 10月12日開札で一番人気であった物件がまさにこの換価競売であった。この競売は相続に端を発する共有物分割請求訴訟でのものと思われる。その物件は東京メトロ丸ノ内線「新高円寺」駅徒歩約1分のほぼ駅前立地にある店舗・事務所ビルで敷地が約25.5坪、建物が築33年の鉄筋コンクリート造3階建で延約48坪である。年収は1000万円強と見られるが、売却基準価額は7679万円であった。これに対し入札44本が集まり、最高価1億8300万円強で不動産会社と思われる法人が落札した。実に138%超の上乗せ率である。競落価格では年表面利回りが5%強で、さほど妙味は感じられないが、抜群の立地がこの高水準の競落結果となったのだろう。共有物分割請求ではやはり透明性のある売買が必要であることで、競売システムが使用されるようだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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