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東京競売ウォッチ

2025年12月16日

第772回 城東マンションに高値波及

 先日国土交通省は新築マンションの短期転売実態などを公表した。それによれば都心6区では12.2%が購入後1年以内の転売が行われているとのことだ。ただ実際は登記簿から情報を収集しているとすれば、転売の登記が1年を超えて行われる場合もあると考えられる。

 また中には第三者のための契約で、登記上は転売と把握されない場合もありそうであり、実態はもっと転売の割合は大きいと思われる。また築浅(築後10年程度)マンションについては新築よりもさらに業者による転売は多いように思う。こういった転売が盛んな市場は都心マンションの価格の高騰を招き、その波及効果は周辺に広がりを見せている。

 12月3日開札では、東武亀戸線「小村井」駅徒歩4分に立地する専有面積約15坪のマンションが入札21本を集め一番人気であった。占有者は競落者には対抗できない賃借人であり、競落者は明渡請求ができ、実需向けの再販売可能な部屋である。売却基準価額は2540万円であったが、競落価格はその1.6倍を超える4120万円であった。専有面積坪単価は270万円を超える水準である。この価格は現在の周辺の同等マンションのエンドユーザー価格に近い印象を受ける。

 また賃貸にしたとして、実質年利回りは3%未満であるだろう。城東地区にも高値が波及していることを実感させられる。ちなみに2番手の入札価格は4000万円丁度であり、この競落が突出したものではない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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