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東京競売ウォッチ

2010年10月12日

第61回マンションへの旺盛な入札

 中古マンション市場の活況を背景に、競売の中古マンションへの旺盛な入札が続いている。

 9月28日開札では、東武東上線「北池袋」駅徒歩7分に立地する築13年で専有面積約20坪(3LDK)の部屋に入札67本が集まった。

 競落したのは再販業者で売却基準価額1,098万円に対し、競落価格が、その3倍近い3,109万9,000円であった。大変大きな売却基準価額に対する上乗せでの落札と言えるが、これは市況が好調であるということもあるが、売却基準価額の設定が現実としてかなり低いということにも起因している。

 東京地裁の競売マンションは、主には土地と建物の積算アプローチで売却基準価額を決定している。しかし、これは実際の中古マンション取引価格と大いに乖離することがある。

 例えば先の北池袋のマンションについては、今年1月に同じ棟内のしかも同じ専有面積の物件が3,400万円で売却されている事実がある。そういう事実がありながら、売却基準価額がその3分の1というのは如何なものだろうか。一般人が極端に安い価格の印象を持つことによって、競落水準に遠く及ばない低額な入札が増える結果になる。また無剰余取消対象の競売事件を必要以上に発生させる可能性もあり、競売手続き上も好ましいとは言えないように思う。

 このようなことがないように、また入札者への分かりやすさという観点からもマンションの売却基準価額の評価には取引事例比較法の考えを導入すべきかと思う。

 現に千葉地方裁判所松戸支部のマンションなど、評価に取引事例が用いられているケースもある。東京地裁も一考の余地があろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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