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東京競売ウォッチ

2011年4月25日

第88回土壌汚染ある土地付建物

 震災後2回目の開札であった4月14日では、入札がなかった物件はわずか1物件であり、引き続き高落札率であった。また落札1物件あたりの入札本数も約9本と、前回の開札日と同水準で、震災前から2割程度のダウンで、大きな落ち込みはない。

 そんな中で、入札22本を集め、売却基準価額の2.2倍を超える水準で落札された土地付建物に目を引かれた。この物件は西武池袋線「椎名町」駅徒歩約5分に立地し、土地は2項道路に接する約30坪で、その上に古い工場・事務所兼居宅が建っている。

 この物件の特徴は、土壌汚染があるとして、その分を減額した売却基準価額にて売却されたことにある。

 現況調査報告書によれば、この物件が印刷工場として使用されていたところから、土壌汚染調査を行った。調査はフェーズ2という実地における汚染物質の成分検出まで行っており、その結果、土壌汚染対策法の基準値を上回る有害物質が検出されたとのことである。

 この物件の評価書によれば、土壌汚染が存することによる減価について見てみると、その減価割合は60%に設定されている。したがって、物件の売却基準価額は803万円であったが、この汚染がなければ2,000万円程度に設定されたであろう。

 落札価格は1,804万円であったので、土壌改良コストは評価書より、かなり低く見積もられたものと考えられる。こういった物件への入札には特殊な知識、経験を要する。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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