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東京競売ウォッチ

2013年9月24日

第198回 東駒形の借地権付建物

 借地権付建物は、競売市場では、一般市場より出現率が高く、従来所有権物件に比較して競落価格水準は低い。しかしここへきて、借地権付建物の売却基準価額に対する競落価格の上乗せ率が高くなってきている。

 8月29日開札では、売却基準価額の2倍近い価格で競落された借地権付建物があった。墨田区東駒形に所在するその物件は、都営浅草線「本所吾妻橋」駅徒歩約8分に立地している。借地権対象土地は西側で幅員11m、南側で幅員6mの各公道に面した約12坪。建物は木造築44年の3階建てで、延床面積約26坪の居宅兼事務所である。

 この内容で売却基準価額は570万円であったが、これに対し入札9本が集まり、最高価1,115万円強にて落札されていった。

 そして、この競落価格から75万円ほど低い2番手の入札者が、この対象借地権付建物の地主であった。その地主はお寺で、この物件を含む約100坪を所有している。そして、今回の競売対象は、この土地のちょうど角地に当たる。お寺は自らの土地の資産性を高めるため応札したものと考えられる。

 ところで、競売の場合は借地権者が地主に借地権譲渡(借地人の名義変更)の承諾を得なければならない。もし地主が承諾しない場合は裁判所から地主に代わって許可を得ることになる。

 ただここで地主は、裁判所の許可に対抗して「介入権」という借地権を競落者から買い取れる権利を有する。そして、その買取価格は裁判所が判定する時価になる。したがって、競落価格が高いと、その買取価格が競落者の競落書価格より低くなる可能性があるのである。

 先の競落借地物件も地主が「介入権」を行使する可能性もあり、競落者としては、競落水準が高いだけに、その動向が気になるところだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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