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東京競売ウォッチ

2017年2月28日

第359回 相続税増税で増加する換価競売

 相続争いはいつの世にも生ずる話であるが、特に土地を共有にて相続した場合には、その分割で揉めることが多々ある。

 共有で相続した場合、その土地を使用している相続人が他の相続人から持分を購入し、単独名義にすることで解決する場合もある。しかし、土地の価値が高ければ、その購入代金の捻出が難しいことがある。一方、相続人全員でその土地を売却し、換金した上で分ける方法もある。しかし、この場合は売買条件などで揉め、売却が進まないこともある。結果として、相続人の一部が、裁判所に共有物分割請求訴訟を提起することにもなる。この場合、和解が成らなければ、結局競売にてその土地を売却し、競落代金を相続人全員で分けることになる。

 これを換価競売といい、2 月9日開札で37本と、この日、最多入札のうえ落札された土地付建物が、まさにそれであった。その物件は東急東横線「都立大学」駅徒歩約15分に立地する。土地は南東、南西で幅員8mと5.5mに面する角地で、約100坪ある。建物は朽廃しかけた古家で、相続人の1人が居住している。相続人は全部で5人いるが、そのうちの2人が換価競売を申し立てている。この物件の売却基準価額は1億6,641万円であったが、競落したのは不動産業者と思われ、競落価格は約2億8,340万円であった。この水準は路線価から計算される相続税評価額の約1.5倍に相当する。

 こういった換価競売は高齢化社会と相続税増税を背景にして今後増加することが考えられる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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