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東京競売ウォッチ

2014年7月15日

第238回 大きな画地の一戸建て住宅

 東京地裁本庁における競落価格の平均は今年に入って1件あたり4,000万円未満で、だいぶ小ぶりになった。そんな中、久々に大きな画地の一戸建て住宅が対象になった。

 その物件はJR中央線「荻窪」駅徒歩約9分に立地している。土地は北東、北西2方向で幅員5.5m弱の公道に面する角地で、広さは113坪強ある。建物は築約26年の木・鉄筋コンクリート造2階建ての8LDK、延床面積約87坪の大型住宅である。

 この物件の売却基準価額は1億3,350万円であったが、これに対し入札が25本集まり、最高価2億3,880万円にて落札されていった。建物の評価を見ないとして、競落価格は土地1坪あたり200万円を優に超え、強気の競落に見える。しかし競落会社は、おそらく更地化して複数宅地で建売などの商品化を図れば、十分採算が取れると判断したのであろう。

 ところで、この物件は競売の差押がなされた時期に、所有者の縁戚の会社と所有者間で形式的な賃貸借契約を締結したことになっている。

 ところが、占有しているのは相変わらず所有者であるが、これについては賃借会社が無償で所有者に使用させていると主張している。

 明らかな競売の進行妨害と思われ、裁判所は買受人に対抗できる権利とは認めておらず、売却基準価額設定にあたっても一切これを考慮していない。

 競落後は明渡し交渉では、当該賃借会社が関与することが考えられるが、あくまで交渉は所有者との間で進めるべきであろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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