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東京競売ウォッチ

2021年8月17日

第564回 昭和築1Rが低い上乗せ率で競落!!

 首都圏の中古マンションは1年前から10%の取引価格の上昇が見られるとの報道が本紙でもなされた。超金融緩和、低金利住宅ローン、住宅ローン控除などがこの現象の背景にあるだろう。ただこの価格上昇はいわゆるファミリーマンションを中心に起こっている。

 築年の新しい1Rマンションでファイナンスがつくものも価格上昇現象は見られるものと思う。しかし築年の古い、特に昭和に建築された1Rマンションはファイナンスがつかないこともあり、この価格上昇の波には乗れていないように思う。1Rマンションの賃貸需要が収縮気味であることも影響しているものと思われる。

 7月21日開札では京王井の頭線「富士見ヶ丘」駅徒歩約9分に立地する築34年の専有面積約5坪の1Rマンションが売却対象となった。この物件は月額31500円と共益費12000円、月額合計43500円にて賃貸中である。固定資産税等は23000円強で月額管理費等は11000円となっている。これら条件を勘案すると年実質収入は37万円弱である。

 この条件で売却基準価額は459万円であった。売却基準価額をベースに考えると年約8%の利回り水準であるが、これに対し入札は16本あり、最高価631万円で競落された。滞納管理費等(約19万円)を考慮すれば年約5.7%の利回り水準となる。一方競落の専有面積坪単価は約130万円であるが、これはこの地域のファミリーマンションと比較すると低い水準だろう。昭和築1Rマンションの相場はマンション相場上昇には乗っていないようだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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