リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2011年3月28日

第84回商業用不動産への入札

 今年の競売市場において注目したい点は、商業用の不動産への入札の動向であると、年初本欄で述べた。

 商業用不動産への入札が多くなるということは、金融機関が商業用不動産への融資を活発化し始めたというサインである。そうなれば、不動産市場も好転することになる。

 3月10日開札でJR「新橋」駅徒歩約7分の銀座8丁目に立地するビルに入札15本が集まり落札されていった。

 この物件、土地は北東側で幅員14.5mの公道に面した約21坪で、建物は鉄骨鉄筋コンクリート造で延床面積は約160坪である。ただ建物の築年が昭和36年と、相当古い。

 さらに、物件の一部に買受人が承継となる「最先の賃借権」が付いていることもあり、すんなり建替えができない可能性もある。そんな条件のもとではあるが、落札価格は売却基準価額1億7,320万円に対し、その約45%上乗せの2億6,222万円強であった。

 ところで、この物件は期間入札不落札による過去売却基準価額の見直しがされている。昨年の7月には、売却基準価額3億1,051万円にて期間入札に付されたが、不落札によって、今般そこから約45%下げた前記の売却基準価額にて再入札となったのである。

 そして今回は大幅な売却基準価額切り下げがあって、大量入札になったのであろうが、結果的に競落価格は前回の買受可能価額(売却基準価額の8割相当の2億4,800万円)以上になった。

 またこの日、文京区春日に立地する事務所・住居混合のビルも開札対象であったが、これも売却基準価額の3割近い上乗せ率で競落された。

 商業用不動産への資金の流入が戻り始めた表れかもしれない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber


Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.