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東京競売ウォッチ

2023年10月17日

第670回 ワンルームに高値波及か

 9月27日開札において、14物件のマンションが対象になったが、そのうち半分の7物件が専有面積25㎡未満の収益目的型1Kマンションであった。築年も平均で築10年強と比較的新しいものが多かった。その中で一番人気であったのが東京メトロ銀座線「外苑前」駅徒歩約6分に立地する築23年で専有面積約5.8坪の1Kタイプの部屋であった。現空のこの物件、売却基準価額1634万円に対し、入札16本が集まり、最高価2600万円にて競落されていった。専有面積坪単価470万円強での落札で売却基準価額への上乗せ率は60%弱であった。この物件、評価書において、取引相場を考慮して価格補正を20%行ったものの、それでも高い上乗せ率で競落された。

 この日競落された1Kタイプ全7戸の売却基準価額に対する競落価格の平均上乗せ率は約54%であった。この上乗せ率は今年上期におけるマンションの平均上乗せ率約44.5%を上回っている。ここ数年の傾向として専有面積30㎡以上の住宅ローン対象のファミリーマンションの方が、1Kに比し上乗せ率が高い傾向にあったが、この日の結果を見るとあながち1Kタイプの上乗せ率が低いとは言えない。マンション再販業者が再販価格を強気に設定できる状況になっているのではないかと思う。その背景には投資用物件に対する融資を扱う金融機関も増加していることがあるかもしれない。また相続税評価額の圧縮においても1Kは手頃ではある。ファミリーマンションの高値が1Kに及んできたかもしれない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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