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東京競売ウォッチ

2024年05月14日

第696回 身近な相続人間の遺産分割請求

 近時東京地裁の競売物件において遺産分割請求由来の形式競売の割合が多い。全体の競売物件数の減少でこの形式競売の存在感が増していると言える。4月25日開札で京成本線「新三河島」駅徒歩約6分に立地する土地付建物が入札32本を集めて一番人気であったが、この物件も遺産分割請求由来の形式競売物件であった。

 土地は幅員6m公道に面した30.6坪で、建物は築32年の鉄骨造4階建て、延床面積約78坪である。1階が車庫で2~3階が住居、4階は小さな物置となっている。この競売は3人の相続人により所有されているが、遺産分割につき合意に至らず一人の相続人が他の相続人相手に遺産分割を申立て今般の競売に至った。気になったのは、遺産分割を申し立てられた相続人がこの物件の2階を占有していて、一方申し立てた相続人がそれ以外の部分を占有していることである。本物件の現況調査報告書には申立てた相続人の弁護士記述がある。それによれば申し立てられた相続人は2階部分を占有しているが、転居しているようで、行き先は不明であるとのこと。同じ建物内に住む相続人間の争いとなって、その争いが元で一方が引越しをしたのであろう。近しい間柄での遺産分割争いは凄惨だったと思われる。この物件の売却基準価額は4812万円で、これに対し最高価は1億666万円強と上乗せ率120%超の高水準競落であった。遺産分割請求由来の形式競売はこれからも多く見られそうだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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