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東京競売ウォッチ

2015年10月06日

第294回 1番人気は神保町のビル

 競売対象物件の減少で、めっきり少なくなったのは都心型ビルの1棟物件である。それも新耐震構造の築年のものはほとんど見られない。そんな中、9月10日開札では地下鉄「神保町」駅徒歩約4分に立地する平成4年築のビルが対象となった。

 そのビルは、敷地が北西側で幅員約11m他、2方で公道に面した約43坪で、建物は鉄骨造7階建て1フロアだけ居宅の事務所ビルである。建物の延床面積は約200坪ある。現状は3フロアを所有者およびその関連が占有し、そのほかは空室もしくは賃貸中である。

 さて、この物件は売却基準価額1億1,896万円に対し、この日1番人気の55本の入札があり、売却基準価額の約3.8倍にあたる最高価約4億5,270万円にて落札された。

 ちなみに、このビルの敷地の正面路線価は1坪約280万円で、そこから相続税評価額を推量すると、約1億2,000万円である。そして建物は評価書の記載では約5,000万円程度の積算価格であり、土地建物の相続税評価額は1億7,000万円程度である。競落価格は、これに対しても約2.7倍で、かなり高い水準である。

 一方でこのビルを全館賃貸稼働させた場合は満室で月額200万円強、年額で2,400万円程度は期待できる。とすれば競落価格で表面利回り年5%強得られることにはなる。収益還元で競落される価格と積算評価額との乖離が、かなり大きく感じる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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