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東京競売ウォッチ

2023年08月01日

第660回 成城の借地権付建物が再入札

 競売で借地権付建物を入手する場合、地主から譲渡承諾を得ることや地主との土地賃貸借契約の締結を買受人が行わねばならない。一般市場での借地権付建物の売買の場合は借地権者である売主があらかじめ地主に売却意思を伝え、譲渡承諾料の額や新地代などの条件の下打ち合わせを行う。

 その上で買主とは地主の承諾を停止条件として売買契約を締結することになる。しかし競売の場合は順番が逆で競落後に買受人が改めて地主と交渉をする。

 従って買受人は競落後に地主と譲渡承諾の件で条件が合意されない場合は、裁判所に譲渡承諾を地主に代わって出してもらうべく裁判(非訟事件)を提起する方法を取らざるを得ない。ただ非訟によって譲渡承諾を得た形で取得した借地権建物は取得後に再販売する場合に買い手の探索にかなり制限がある。再販売する場合もおそらくは再び非訟によらねばならないためだ。そんなことから、競売の場合、競落された借地権建物が地主との交渉不調で、非訟による取得を避けるために、入札保証金を放棄して取得を断念する場合がある。

 7月12日開札で小田急小田原線「成城学園」駅徒歩約13分に立地する借地権付建物がまさに昨年12月に競落されたものの、代金納付がなされず再入札となった物件であった。

 土地は私道(42条1項5号)に面した約41坪で建物はかなりの古家で空き家状態である。この物件、昨年12月では売却基準価額1948万円に対し入札が5本あり、最高価2941万円にて個人が落札した。しかしおそらくは譲渡承諾や建て直し(古家の為)承諾そして新地代などの協議が整わず、代金納付をしなかったのだろう。

 今般同じ売却基準価額に対し入札が2本で最高価2337万円にて法人が落札した。今回は果たして地主との交渉は妥結するのであろうか。あるいは既に下話ができているのか。知りたいところであるが、一般には分からない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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