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東京競売ウォッチ

2013年6月11日

第184回 茅場町の築54年のビル

 5月21日開札では100%落札を記録し、競落1物件あたりの入札本数も15本強にまで及ぶ活況ぶりで、勢いは収まりそうにない。

 さて、朝鮮総連本部が45億円を超える金額で競落されたのは、まだ記憶に新しいが、この日も30億円を超える落札があったのに目を引かれた。

 その物件は、東京メトロ東西線「茅場町」駅徒歩約2分に立地する築54年のビルと、その敷地である。土地は北東側で幅員約33m、南西側で幅員約8mの公道に各々面する約130坪で、建物は9階建ての延約806坪という内容である。

 この物件、現状すべて空室であり、取得後の建替え、再開発がすぐに行える。売却基準価額は6億6,847万円であったが、これに対し、入札は7本あり、32億4,000万円にて競落されていった。

 競落したのは合同会社であるところから、投資家の投資資金と、融資の受け皿になる再開発用のSPCと目される。

 ところで、この競落水準であるが、売却基準価額の5倍を超える。建物評価をゼロとするならば、競落価格は土地1坪あたり2,500万円程度に相当し、これは公示地価等の2倍以上である。

 いくらアベノミクスといっても突き抜けた高い水準であるので、おそらくは債権者サイドの入札であると推察されよう。

 しかし、この日、全体として、売却基準価額の2倍を超える事例がこのほか15件もあり、高い上乗せ率状態であることには違いない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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