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東京競売ウォッチ

2014年9月30日

第248回 祖師ヶ谷大蔵のマンション

 1カ月超ぶりの開札であった9月11日も開札対象はすべて競落される結果であった。大量入札物件が多々見られ、競落1物件あたり約14本の入札であったが、その中にあっても入札が1本だけという物件も3物件あった。

 その中の1物件は小田急線「祖師ヶ谷大蔵」駅徒歩約14分に立地するマンション。立地から考えれば、入札が多くても良いのであるが、1本のみに止まったのは、このマンションの特殊性にある。築年は30年弱と一概に築古とも言えない。しかし、その建物構造が鉄骨造であるところから、建物評価はかなり減ぜられるだろう。

 さらにこのマンションの全体戸数は8戸と少数であり、管理組合はないとのことである。加えて、この建物全体が建蔽率、容積率を超過していて、再建築ができないという問題もある。

 メゾネット形式であるこの部屋の専有面積は約25坪であるが、その売却基準価額は1,151万円であり、専有面積坪単価は46万円程度と立地を考えればかなり安価に見える。しかし、結果が入札1本であったのは、先に述べた構造や法令抵触などで、再販時に購入者に対する住宅ローンが付きにくいなどのハンデがあることを多くの業者が重く見たからであろう。

 ちなみに競落したのは昨今多くのマンションを競落している再販業者であった。競落価格は売却基準価額の1.5倍近い1,706万円弱であった。提携ローンなどで再販のハンデを克服できるという読みなのだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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