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東京競売ウォッチ

2010年4月5日

第36回競落後に隠れた事故発覚

 競売物件取得にあたってのリスクの一つに、その物件に自殺や事故などの事実が過去にあっても、一般物件に比して分かりにくいということがある。

 3月25日の開札において、約8カ月前に競落されたマンションが売却基準価額を下げて、もう一度開札となった事例があった。それは同じ棟内のマンション2室で、都営大江戸線「蔵前」駅徒歩5分に立地する築25年のマンションである。対象となった1室は専有面積15坪強の3DKで、昨年7月に売却基準価額838万円のところ、入札22本が集まり、1,980万円にて落札された。しかし競落後、当該物件にて過去の占有者が浴室で溺死していることが判明し、売却許可決定が取り消されたようだ。今回10%減額した売却基準価額725万円で売却されたところ、入札11本が集まり、昨年の20%弱ではあるが、売却基準価額の2倍を超える1,660万円にて落札された。

 もう一方は専有面積が先の部屋より広く、昨年売却基準価額1,903万円にて売却されたところ、入札14本が集まり2,601万円にて落札された。しかし、こちらの部屋は過去に火災があり、当時の占有者が一酸化炭素中毒で死亡した事実が発覚。今般は売却基準価額が20%引き下げられ、1,471万円で売却となった。結果は入札11本で、競落価格3,267万円と、前回よりも高い数字で売却されていった。

 隠れた事故という障害があったとしても、再入札で多くの入札が集まったということは現状、業者の中古マンションの仕入れ競争が激化している証左であろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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