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東京競売ウォッチ

2012年11月27日

第159回 敷地利用権がない区分建物

 先週本欄で、ワンルームマンションへの入札が活発化しているという話を書いた。収益目的の不動産への注目度が高まっているようだ。不動産投資信託(REIT)の相場も上昇傾向にあり、投資家の資金運用について、不動産への関心が高まってきているようだ。

 ただ現物不動産については、金融商品に比すれば、個別性が強いので、投資判断が難しい面がある。

 11月1日開札で、敷地利用権がない区分建物が売却に付された。その物件は都営新宿線の「新宿3丁目」駅徒歩2分に立地する店舗である。飲食店街の中にあり、この店舗1棟の建物はスナックやバーなどが多く入居する、いわゆるソシアルビルである。

 対象物件の専有面積は約4坪で、6階部分に存し、スナックが営まれている。現状、月額22万円にて実質賃貸がなされているようである。

 ところで、この物件の敷地利用権については、先に述べたように売却対象になっていない。記録を見ると、この建物の所有者はこの部屋に対応する敷地の所有権の共有持分を有しているようだが、これについては競売に付されなかった。

 当然、今回の競売で落札しても、この敷地の共有持分は取得できない。そこで、競落後、それを所有者から買い取るか、賃借するか、いずれかを行わなくてはならないだろう。

 そんな権利の瑕があるものの、管理費等を控除しても年収200万円を優に超える収益性に対し、売却基準価額が413万円と低額であったことからか、入札は15本も集まった。

 結果は売却基準価額の約2.8倍の1,156万円にて競落されていった。敷地利用権がないハンディキャップを考慮しても、この取得価格であれば、高利回りが獲得できると競落者は考えたのだろう。

 瑕あり不動産は、瑕の影響の見積もり方次第ということだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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