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東京競売ウォッチ

2022年12月20日

第630回 借地権区分で係争あり物件に高上乗せ落札

 競売にたまに見かける物件に親族間での土地の貸し借りについて係争がらみのものがある。親族で土地、建物の所有者が分かれてしまうと、当事者が死亡するなどで代替わりが起こると権利関係で揉めることが多々ある。11月22日開札で東急田園都市線「三軒茶屋」駅徒歩約3分に、その例とも言える物件が対象になった。土地(約34坪)の上に居宅兼共同住宅(鉄骨造築40年)が建っている。かつて兄弟のうちの一人が土地を所有していておそらくは兄弟で建物を建て、その建物を区分登記し、1階と2~3階でそれぞれ所有したと思われる。時が経ちその兄弟はいずれも死亡し、それぞれの相続人の所有となった。土地所有者は建物(区分された2~3階)の所有者に対し、地代の不払いもあり、賃貸借契約は解除され、利用権原が無いと主張している。一方で建物所有者の相続人はかつて土地所有者との間で結ばれた和解に反する事があるとして土地賃借権は存すると主張。今般建物(区分の2~3階)が競売になり、裁判所はその土地賃借権は認定したものの、通常の土地賃借権の4割減で評価している。

 この物件の売却基準価額は493万円であったが、これに対し入札が5本あり、最高価1551万円にて競落された(次順位無し)。こういった係争ありの特殊物件に入札があるのに驚かされるが、さらには今年7月21日にこの物件は入札7本で最高価1706万円にて一度競落されていることも驚きである。おそらくはその時の競落人が権利関係整理を断念し、入札保証金(98.6万円)を放棄して今回再入札されたのだろう。再挑戦となる今回の競落人が上手く権利関係を整理できるのか、興味があるところである。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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