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東京競売ウォッチ

2017年5月30日

第370回 旧耐震構造マンション最多入札

 先週の本欄で築浅の都心中古マンションの品薄による高値取引について取り上げた。しかし4月25日開札では旧耐震構造マンションが52本のこの日最多入札を集め落札されていった。

 その物件は東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅徒歩約7分に立地する専有面積約22坪の1LDKの部屋であった。

 このマンションは昭和56年9月に竣工していて、いわゆる旧耐震構造である。

 この部屋の売却基準価額は883万円であったが、これに対し落札額は4374万円と、何と売却基準価額の5倍弱という高上乗せの価格であった。

 大きな乖離の原因の一つに耐震調査の結果がある。現況調査報告書には、管理組合が耐震診断を行った結果、強度不足との判定を受けたことが記載されている。そしてこれを受けて、評価書において競売市場修正として、正常価格に対し、3割減を行っているのである。

 建物の物理的評価については、築年に相応した価格を計算しているが、その上さらにこの減価がなされたのである。

 もし仮に管理組合が耐震診断を行っていなければ、この減価は無かったと思われ、売却基準価額は130 0万円程度であったろう。

 耐震診断という積極的な行いが、評価額低下を招くというのは皮肉な話である。

 それにしてもまだ競落価格との乖離がある。これはこの部屋が10階建の最上階10階に位置し、広いルーフバルコニーが付設されていることで、市場価値は他の住戸に対して高いはずであるが、この点に関して評価書において考慮されていないことも大きく影響されている。

 競売のマンションの売却基準価額の設定が対象住戸の強み、弱みはほとんど関係なく決められているのも現実である。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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