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東京競売ウォッチ

2019年8月27日

第475回 田園調布一等地で争族の末、換価競売か!!

 不動産の共有持分による相続は、相続人の間での調整が難しい。特に土地建物において土地は複数の相続人で相続されたものの、その土地上の建物が一部の相続人名義で、且つその方が居住しているとなると話はさらに拗れやすい。

 建物所有者・居住者はそのまま居住し続けたいが、その他の相続人は売却してお金に換えたい。話し合いが付かず結局相続人の一部が裁判(共有物分割請求訴訟)を提起し、その結果換価競売に付されることもある。

 8月1日開札では田園調布3丁目の一等地約170坪がこのケースと見られ、競売に付された。この土地上には競売に付されない一部相続人名義の建物(築52年で鉄筋コンクリート造2階建、延床面積約43坪他)が建っている。競落者は土地取得後この建物の明渡及び収去を行わねばならない。

 建物には土地利用の権原はないが、競売の評価書では建物に土地評価額の20%の場所的利益、約9500万円を計算している。おそらく競落者は示談か明渡訴訟の前の調停でこれに相当する明渡料を建物所有者に提供することになるのではないだろうか。

 ちなみに売却基準価額は2億820万円であったが、これに対し9本の入札があり、最高価4億8589万円にて競落されていった。仮に建物収去に1億円を要したとして取得コストは5億9000万円程度で土地1坪350万円弱なので、相場を考えれば競落者は採算が取れそうだ。争族競売、これから増えそうである。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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