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東京競売ウォッチ

2010年7月5日

第48回渋谷駅徒歩3分の店舗

 リーマンショック以降のミニ不動産バブル崩壊で、一部都心の開発が事業者の破綻によって頓挫した。これらの物件は権利関係整理途上で放置されることになり、やむなく破綻事業者への貸付金融機関は、そのまま競売での回収を図ることになる。このとき商業物件などでは、賃借人の明渡しに対する未払い立退料などの扱いが大きな問題になることがある。

 6月24日開札で、渋谷駅徒歩3分に立地する商業地およびその土地上の古い店舗が対象となった。この物件は約1年前、やはり入札対象であったが、開札前に「変更」ということで、開札されなかった。

 このときの売却基準価額は1億9,251万円であった。当時の現況調査報告書では、一部の店舗以外は空室で、債務者が占有していることになっていた。それをもとに売却基準価額を算出していたが、この空室部分については、そもそも抵当権設定登記前からの賃借人らがいたのである。そして、その賃借人らは所有者との間で立退料他(合計約1億5,000万円)の受け取りを前提に和解し、退去したにもかかわらず、その立退料は結局支払われなかったようだ。これについて、おそらく裁判所に申立てた結果、前回「変更」扱いとなった上、今般その金額を買受人が負担する留置権として認定し競売に再度付することになったのである。

 結果、この物件の売却基準価額2,962万円となり、これに対し入札6本が集まり、最高価1億8,000万円にて競落されていった。大幅に売買条件が変わった例である。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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