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東京競売ウォッチ

2024年05月07日

第695回 借地権シェアハウス個人落札

 競売対象の借地権付建物は古いものが多く、入札者は競落後地主の承諾を得て建替えすることが多い。この場合地主に対しては譲渡承諾と建替え承諾を併せて取得することになり、承諾料の交渉が円滑にできない場合も多い。しかし、建物をそのまま利用する場合は譲渡承諾料だけの交渉なので纏まるのは建替え前提より円滑に進みやすい。古い建物をそのまま利用するケースはアパートなど収益物件によく見られる。ただ建物が古いことで購入資金に対する銀行融資を受けにくく、大抵は現金購入となる。

 4月10日開札ではJR総武本線「新小岩」駅徒歩約6分に立地する敷地面積約23坪で築45年の木造1戸建ての借地権付建物が対象になった。建物は延べ23.5坪の3DKであるが、各部屋に2段ベッドを設置し、10人以上の転借人に貸すシェアハウスとして運用している。

 このシェアハウス運営会社からは月額17万円の賃料が一括建物所有者に支払われる賃貸借契約が締結されていて、この賃借権は承継義務のある最先の賃借権である。従って競落者はシェアハウスへの賃貸前提での買受となる。この物件の売却基準価額は1108万円であったが、これに対し6本の入札があり、最高価1369万円にて個人が落札した。(次順位入札者も個人)この物件の地代は月額16100円であるので、差し引き約180万円の収益となる。競落価格に地主に支払う譲渡承諾料を考慮しても年利10%以上が期待できることから入札が集まったのだろう。もしこの物件がシェアハウスではなく通常の戸建てであれば入札は1~2本の水準であったように思う。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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