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東京競売ウォッチ

2011年6月28日

第96回コンパクトマンション、金融円滑法で割合が高まる

 東京地裁での競売マンションの特徴として、専有面積50㎡未満のワンルームから2DKの比較的面積が小さい、コンパクトマンションの割合が多くなっていることである。6月9日開札では全39戸の対象マンションのうち26戸と、7割近くがコンパクトマンションとなっていた。

 一般市場での状況と明らかに相違している。これは部屋面積が50㎡以上のものはファミリーマンションで、実需目的の購入が主である。一方でコンパクトマンションは投資的購入の色彩が強くなる。

 東京地裁でコンパクトマンションの割合が大きいのは、一つに中小企業金融円滑化法の影響があろう。ファミリーマンションは、債務者が利用している融資が主に銀行中心の住宅ローンなので、同法によって返済延滞に伴う競売申立が抑制されている。一方でコンパクトマンションにおいては、ノンバンクなどの非住宅ローン利用のケースが多い。結果として、競売市場に登場するコンパクトマンションの割合が高くなるというわけである。

 一方で、競売市場での人気についてはコンパクトマンションより、ファミリーマンションの方が高い。

 6月9日開札では、ファミリーマンションは平均で1物件落札あたり約12本の入札本数であったが、コンパクトマンションは、これが10本に届かない。

 しかし、この日、コンパクトマンションの中でも、中央区日本橋に立地する物件と、板橋区志村の物件、2物件については、いずれも27本もの大量入札を集めた。

 ただ両物件とも、壁芯面積が40㎡を超えており、住宅ローンを使う実需ユーザー向けにも販売できる物件ではあった。

 今後、コンパクトマンションの市場動向が競売マンションへの入札本数に影響を与えていきそうだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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