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東京競売ウォッチ

2011年6月6日

第93回震災後のタワーマンション

 震災後、東京ではマンション購入希望者の物件選択傾向に変化が生じていると言われる。耐震基準に敏感になっていることもあるが、そのほかタワーマンションについても、地震の長周期振動による揺れの大きさや、エレベータの停止リスクなどで、敬遠される風潮があるとの報道が最近なされている。

 実際、競売市場ではこの辺のところはどうなっているのだろうか。

 5月26日開札において、2つのタワーマンションが開札対象になった。

 1つは港区台場の物件で、築5年の「ザ・タワーズ・ダイバ」である。専有面積24.5坪の3LDKで、売却基準価額4,047万円に対し、入札は11本で、競落価格は5,534万円であった。売却基準価額に対する競落価格の上乗せ率は37%弱と、最近のマンションの平均上乗せ率約50%を下回る。また、競落価格の専有面積1坪単価は約226万円であるが、同じ棟内には310万円超を販売価格とする販売中物件があるので、市場の販売価格の3割引程度の競落水準と言える。

 もう1つの物件は台東区の「タワー・レジデンス・トーキョー」であるが、こちらは競落価格の上乗せ率が約25%、一般市場の売出し価格水準との比較は前物件と同じ3割引程度といったところである。

 震災前に比して入札本数が極端に減少することはないものの、やはり競落価格については弱含みになっているとは言えそうだ。

 ちなみに、この日の一番人気は杉並区に立地する、築7年の中層マンションで、競落価格の上乗せ率は約70%であった。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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