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東京競売ウォッチ

2022年4月19日

第598回 マンション1/10共有持分に多くの入札!!

 競売市場の特徴の一つに共有持分の売却がある。その発生原因は多くが身内の金銭トラブルであろう。通常金融機関は1物件の共有持分を担保にして融資を行うことはない。従って大抵は訴訟を経由した競売である。消費者金融などで返済不能となった場合に債務者の財産等を差し押さえる。それが不動産の共有持分であれば、それについて裁判を経由して差し押さえるわけである。

 しかしこういった場合実際に競売が実行されるケースは少ない。というのも共有の相手方が大抵身内であり、身内がその共有持分を買い取るなどして債務を解消するからである。しかし、当の債務者が行方知れずなどになっていれば、こういった共有持分の任意処分はできない。そうなると当事者不在でも処分ができる競売に移行してくるのである。

 3月23日開札では東武伊勢崎線「東向島」駅徒歩約5分に立地する区分所有マンションの共有持分10分の1が競売に付された。この物件の評価書を見ると、マンションの部屋全体の正常価格を3500万円として、それの10%にさらに共有持分の特殊性に対し割引20%をして、売却基準価額224万円となっている。(滞納管理費等は無い。)

 これに対し結果は入札を10本集め470万円強で不動産会社が落札していった。この物件の市場価格は過去の類似物件成約事例から5000万円程度と見られるので、ほぼ市場価格レベルでの共有持分落札であり、驚かされた。不動産会社の仕入れ物件確保難を反映した結果と言えよう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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