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東京競売ウォッチ

2010年11月15日

第66回西小山の古家に入札25本

 競売物件においては、買受人が負担することとなる権利の有無によって、競落価格にかなりの相違が生じる。

 10月28日開札で東急目黒線「西小山」駅徒歩7分に立地する土地付建物が25本の入札を集め、また売却基準価額4,223万円に対し、その2倍弱の高額上乗せの8,350万円にて落札された。

 この物件は土地が南西角地の約48坪で、建物は昭和28年築の古家である。落札者は一般的に考えれば、競落後は建物を取り壊し、土地として再販するか、新しい建物を建設し、建売住宅として販売するものと思われる。

 ところで、この物件は今年7月に一度入札期間が設定されていた。そして、当時は建物に対して、買受人に対抗できる賃借権が存する前提で売却に付せられていた。賃借権を主張するものは、この建物の従前の所有者であったが、抵当権設定前に親戚に売却し、賃借人として居住している。

 前回の競売においては、この賃借権を買受人が引き受けるものとしていたので、売却基準価額は今回より、200万円ほど低かった。しかし、前回おそらく債権者サイドからこの賃借権について異議があり、売却条件を変更し、再度期間入札となったものと思われる。

 たぶん裁判所は、その異議を認め、先の賃借権を正常ではないものとして、今回、その権利を使用借権としたものと考えられる。

 もし、前回そのまま賃借権引き受けでの入札となれば、売却基準価額の相違金額200万円などではなく、落札価格は大いに低いものになったと考えられる。

 債権者も競売に関しては、入札期間前、その売却条件がどんな形になっているか十分に確認しておかなければ、不測の損害を蒙ることにもなる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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