リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2023年11月07日

第673回 商業地相場にやや陰りか

 都心の不動産市況はマンション価格の上昇などが目立ちまだまだ好調な感じを受ける。ただ競売市場において少し変調を感じる。それは競落1物件あたりの入札本数である。2022年通年では13本強であったが2023年上期は約11.85本と少しばかり低下した。そして10月25日開札では約9.6本と10本を下回った。今年夏頃から10本を下回る開札日が見られるようになり、入札の勢い低下が若干感じられる。

 そんな中10月25日開札での一番人気は東京メトロ銀座線「田原町」徒歩約4分に立地する作業所・居宅の1棟物件であった。この物件、土地は東側で幅員約6mの公道に面した約27坪で、建物は築40年の鉄骨4階建、延床面積約40坪である。2階の居宅部分には最先の賃借人がいて、その他は空室である。ちなみにこの物件は相続人の共有物分割請求由来の形式競売であり、空室部分の明渡しには障害は無さそうである。この物件の売却基準価額は5046万円であったが、これに対し、29本の入札が集まり、最高価1億3530万円弱で競落されていった。この競落価格では建物価値をゼロとして土地1坪約500万円に相当し、これは正面路線価の約2.8倍にあたる。これを見ると確かに依然高水準競落にも見えるが、この物件には次順位資格相当額の入札は無かった。建物の2階部分に賃借権承継部分が残ることを考慮しても少し競落競争が弱まった感じがする。相場の岐路に差し掛かっているのかもしれない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber


Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.