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東京競売ウォッチ

2015年2月10日

第264回 恵比寿の商業ビルに入札32本

 2015年が明け最初の開札は昨年に引き続き盛況で、1件を残しすべて入札があった。この日の1物件最多の入札本数は32本で、2物件あったが、そのうちの1物件が大きな上乗せ率での競落で目を引いた。

 その物件はJR山手線「恵比寿」駅約4分に立地する商業ビルである。土地は北側で幅員約9mの公道に面する約72坪で、建物は鉄筋コンクリート造5階建て、延床面積は約194坪ある。売却基準価額は2億2,579万円で、これに対し前述のとおり入札が32本あり、最高価が12億1,460万円弱であった。これは売却基準価額の5倍を優に超える水準である。

 あまりに高い競落価格であるが、その理由は債権者の自己競落だからだ。この物件の所有者・債務者は2007年8月に取得しており、この時に購入資金を融資したのが今回の競落者であるアトリウム社であった。抵当権の債権額はまさに落札価格相当の12億5,000万円であった。

 この当時は東京を中心としたファンドバブルの時期であり、かなり高い土地相場であった。その後、リーマンショックを経過して地価が暴落し、今回の競売に至ったと思われる。

 ちなみに、この物件は昨年9月11日に開札対象であったが、「変更」ということで、今年再入札になっている。

 実際、競売条件は売却基準価額を含め変わってはいないが、利害関係人から何らかの異議が昨年あったようだ。「変更」の理由による開札中止物件は、そのほとんどがこの例のように再入札になる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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