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東京競売ウォッチ

2011年6月13日

第94回液状化しやすい地域の物件

 本紙ですでに報道済みであるが、国土交通省が四半期ごとに行う「高度利用用地地価動向」で、去る5月27日発表のもの(今年1月1日から4月1日の地価動向)によれば、東京は地価上昇地域がゼロであった。

 とくに、豊洲などの湾岸エリアは前回上昇地域であったものが、今回下落に転じている。これは明らかに震災後の土地の液状化に対する警戒の表れであろう。一般の住宅購入者は官公庁がインターネットなどで公開している液状化予測図やハザードマップなどを見るようになりそうだ。

 さて、5月26日開札で1物件だけ入札がなく、特別売却に回った物件があった。それは日暮里舎人ライナー「谷在家」駅徒歩約5分に立地する土地付建物であった。

 土地は北側で幅員約12m、西側で幅員約4mの公道に面する約56坪。建物は築約33年の鉄骨造3階建てで、事務所や居宅などに供されおり、延床面積約150坪である。占有関係は最先の賃借権者はおらず、占有者はすべて引渡命令対象であった。

 この条件で、売却基準価額は3,444万円、買受可能価額は2,755万円強であった。これは仮に建物評価ゼロとすれば、買受可能価額ベースで、土地1坪あたり50万円水準である。

 ちなみに、この土地の正面路線価は1坪当たり約64万円であるので、正面路線価の2割引以上でも、結果として、買受人が現れなかったことになる。

 そこで、足立区の液状化予測図を見てみたところ、まさに当該地が最も液状化しやすい地域に入っていたのである。この物件について、液状化しやすい地域であることが、不落札の主因であったかどうかは不明であるが、液状化については、今後競売物件においても、入札前のチェック項目になっていくことには間違いはなかろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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