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東京競売ウォッチ

2017年9月26日

第385回 都心のマンションが売却基準価額以下で落札

 先週は、好立地のワンルームマンションが高値競落された事例を紹介した。こういった市況では、競落価格の売却基準価額の2倍に達することもよく目にする。しかし、その中にあって売却基準価額を下回る都心マンションが9月5日にあったのに目を引かれた。

 そのマンションは小田急小田原線「代々木上原」駅徒歩約5分に立地する築45年のマンションである。専有面積は約14坪、間取りは2DKで売却基準価額は3490万円であった。売却基準価額の2割引が買受可能価額であり、有効な入札価格の下限であり、本件の場合は2792万円になる。築年が古いとは言え好立地であるが、結果として入札は2本に止まった。そして最高価は売却基準価額を下回る3060万円であった。これはこのマンションの敷地に不明部分があることに起因しているようだ。

 このマンションはもともと1棟の普通建物であったが、そこを区分登記して、分譲したようだ。そして1棟マンション建設のときに南側の第三者所有地も建築確認対象敷地面積として参入しているようで、その土地の利用権限は曖昧である。ただ評価書においてはこの点について減価はしていない。しかし現実には銀行ローン等を利用して購入しようとした場合、担保評価に支障があるだろう。これにより再販業者が入札を躊躇したようだ。古いマンションにはこのように建築確認申請時の敷地と、敷地利用権のある敷地が一致しない場合がある。遵法性が問われる昨今、こういったことが、減価を引き起こす。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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