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東京競売ウォッチ

2015年7月28日

第286回 森下の築22年、鉄骨造3階建て

 競売物件における土地付建物は、建物がまだ老朽化していない場合、それをそのまま使用するか否かによって入札価格が大きく異なる。

 7月9日開札で1番人気物件は、1階が事務所で2階、3階が住居である土地付建物であった。都営新宿線「森下」駅徒歩約2分に立地するこの物件、土地は南側で幅員6m、西側で幅員3m(2項道路)の各公道に面する整形地約16坪強で、建物は築22年の鉄骨造3階建て、延床面積約41坪である。この建物は先に記したように1階は事務所で、2~3階が住居であるが、その広さの割に間取りは2LDKになっている。

 鉄骨造で22年経過しているとなると、かなり償却が進んでいる。そして建物の内容が特殊であることから、不動産業者は、現建物を取り壊し更地化して再築し、販売することを考えるだろう。そうなると入札価格は建物分については、解体コストを勘案して、むしろマイナス評価になる。

 一方、この建物を解体せず手を入れて利用する場合は、建物の価値を評価できるのである。

 さて、この森下の物件、売却基準価額が2,532万円であったが、これに対し50本の入札があり、最高価7,272万円にて個人が落札していった。売却基準価額の約2.8倍の落札価格であったが、これは建物利用が前提となっている数字であると思われる。不動産業者にはとても届かない数字である。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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