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東京競売ウォッチ

2012年2月28日

第125回 自殺や不自然死のあった物件

 不良債権化したローンの対象不動産の多くは任意売却により処理される。しかし、これが物の瑕疵で進まないこともある。瑕疵の中には当該物件内で、自殺や不自然死があった場合もあり、ゆえに競売物件の中には、そういった事情を抱えた物件が見られるのである。

 2月9日開札では、日暮里・舎人ライナー「舎人」駅徒歩17分に立地する同一所有者所有の一戸建て2軒(2軒は1軒挟んで近接)が売却対象になったが、この2軒のうち1軒については、4年半くらい前に、殺人事件の現場になっている。さらに事件は殺人後、遺体がバラバラに切断されるという凄惨なもので、当時マスコミ報道も多くあった。

 2軒とも土地は21坪弱で、建物は築10年の木造3階建て、延床面積約24坪である。それぞれ市場価格として、1,800万円くらいは考えられるだろう。

 それが1軒は売却基準価額680万円で、もう一方が1,129万円であった。

 この相異は、1軒は正に事件現場であったが、もう1軒は同一所有者であるが、現場ではなかったことによる。現場になった物件の方は、40%減額の市場修正を行っているが、もう1軒は特段の減額はなかった。

 結果はそれぞれ3本の入札があり、減額された方の物件は868万円、もう一方は1,418万円で同じ業者が競落していった。

 自殺や不自然死による評価の減額は、その程度を鑑み、評価人の裁量により、20~40%が施されているようである。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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