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東京競売ウォッチ

2025年08月05日

第755回 2世帯住宅は明渡注意

 競売物件での最大の問題は物件の明渡しにある。競落後占有者に買受人は直接明渡を交渉しなければいけません。例えば4人家族で住んでいて、そのうちご主人だけが債務者である場合、もし明渡の強制執行のための引渡命令申立てはご主人相手だけで足りる。それはその他の家族は「占有補助者」という扱いになり、債務者と同じに見られるからである。

 しかし、家族が占有補助者と見られないケースもある。7月9日開札では西武新宿線「上井草」駅徒歩約11分に立地する一戸建てが対象になった。この戸建ては完全2世帯になっている。つまり1階には債務者の義父が住み、2階、3階に債務者家族が住んでいて、独立玄関であり、それぞれ内部での往来ができない造りとなっている。

 この場合、2階3階に住む債務者以外の家族は「占有補助者」である。しかし、1階に住む義父はおそらく独立した使用借権としての占有ということになるだろう。そうすると、引渡命令を申し立てる場合には1階部分と2階部分別々に申し立てることが必要になるだろう。こういったケースでは義父は相当の高年齢であり、場合によっては要介護状態であったりするとその部分だけが強制執行不能になってしまうリスクがある。事前の現地調査で近隣の聞き込みを行うなど、分かることは限られるものの、出来得る対処をしたいところである。

 ちなみに先の下井草の物件は売却基準価額7749万円のところ11本の入札があり、最高価9889万円弱で競落された。割と低い上乗せ率での競落であったところから明渡以外でも2世帯住宅の商品化等の難しさも感じた。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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