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東京競売ウォッチ

2014年7月22日

第239回 建築費の高騰で分譲価格も上昇

 建築費の高騰は良く知られるところである。マンションデベロッパーにとって、今後企画の物件について、分譲価格の引き上げがどこまでできるのかが大きな不安材料であろう。とくに一次取得者向けのファミリーマンション企画に大きな影響がある。売値を4,000万円程度に設定しようとすれば、建物原価が1戸あたり2,000万円を超えるような現況、土地に回す原価予算が取りづらい。

 一方で事業用地はアベノミクスが話題に上る中で、地主からそう安くは仕入れられない状況もあり、どうしても販売価格を相当程度上げて行かなければならなくなる。

 そんな状況となれば、年収が追い付かないエンドユーザーはこれから新築から中古へ購入ターゲットを変えていかざるを得ないだろう。

 6月26日開札で一番人気であったのが、この一次取得者用マンションが従前から供給されてきた地域の物件である。

 その立地はJR常磐線「亀有」駅徒歩約11分、築14年強で、専有面積26坪弱の3LDKである。売却基準価額が1,750万円のところ入札37本入り、最高価2,738万円弱にて再販業者と思われる会社が競落していった。

 ところで今年2月、このマンションの最寄駅である、亀有駅徒歩約7分で専有面積27坪強の中古マンションが3,300万円で成約している。成約専有面積坪単価は120万円強になる。この成約事例から推すと、先の競落マンションの再販価格は3,000万円程度であろう。となれば、競落会社は再販利益をわずかしか得られないことになる。

 おそらく競落会社は、近辺の新築マンションの値上がりと、それに伴う中古相場の上昇を見込んで入札価格を設定したのだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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