リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2025年10月07日

第763回 高い取下げ率に驚かされる

 先の全国の基準地価の発表は不動産価格の堅調さを明確に示した。特に東京の商業地、住宅地の上昇率は顕著であった。こうなると不動産担保融資の不良債権はかなり縮小していると思われる。売買事業を行う不動産会社は高値で仕入れたと思っても時間の経過により販売利益が取れる水準での売却が可能となる。東京地裁本庁の競売不動産は年々減少してきたところ、今年7月に差押え件数が増加し開札対象物件も反転する気配があった。しかし熱気を帯びた市場が続いたことで差押えの後の任意売却による債権処理が進んでいる。

 9月25日開札において期間入札の公告対象物件は20物件であったが、開札日前日まで間断無く取下げが起こり、開札当日は僅か11物件の開札対象に過ぎなかった。対象物件11物件というのはこれまで本トピックス執筆を担当してから初めてのことであると思われる。

 今後入札を検討しても開札までに取下げとなる確率は当分高いと見込まれることを入札者は覚悟する必要があるだろう。

 そんな中この日の一番人気は東武大師線「大師前」駅徒歩約14分に立地する築21年の専有面積約22坪の2LDKのマンションであった。売却基準価額は2321万円であったが、これに対し16本の入札があり、最高価3172万円強にて不動産会社が落札していった。専有面積坪単価が約144万円の落札であるが、この地域のレインズ登載情報を見ると決して割安感は無い。ファミリー層が買える中古マンション数が少ないことが、強気の入札の背景にあるのだろうか。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber


Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.