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東京競売ウォッチ

2019年6月11日

第465回 小岩の長期賃借権付マンションを個人が落札!!

 落札1物件あたりの入札本数は一頃より大分低下し、5月23日開札では8.3と10を切ってきている。ただ競落水準も下がっているかと思うと、マンションの競落価格は決して下がってきた感が無い。

 前週紹介した天王洲アイルのワンルームマンションのように都心ではなくとも、高上乗せ落札が見られる。同じ5月23日開札では京成本線「京成小岩」駅徒歩約11分に立地する専有面積約17.2坪の3LDKの部屋が売却基準価額725万円に対し、その2倍に近い1407.5万円にて個人が落札した。

 ただこの高上乗せ比してそれでも安い感じである。それはこの物件に長期賃借権の賃借権者が占有しており、それが売却基準価額を下げていることに依ろう。長期賃借権者占有での減価は、収益還元法採用での評価額を算出し、その評価額と積算の評価額の間を取るという考え方で評価書上なされている。

 実際この部屋の賃借人の賃料は月額97000円で、管理費等や固定資産税等を控除すると実質77万円程度であり、競落価格では滞納管理費等(約170万円)を考慮すると、年利回りは約4.8%である。そもそもファミリーマンションの長期賃借権付物件については再販業者の入札が少ない。

 ただ個人にとってはこういった物件も収益物件として魅力があるのかもしれない。しかしこの物件は新耐震基準であるが築28年超で、また1階部分でもあり且つ最寄駅徒歩10分以上なので将来の賃貸需要に懸念は感じる。賃借人退去後自らが居住するのであれば良いようには思う。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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