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東京競売ウォッチ

2018年11月13日

第438回 業者の仕入れは未だ堅調か?

 10月25日開札での一番人気は好立地の古アパートであった。その物件は西武池袋線「椎名町」駅徒歩約3分に立地する。土地は南側で幅員4.3mの公道に面する整形地で広さは約75坪である。その上に昭和31年6月築の木造2階建の古アパートが建っている。風呂なし、共同便所で17室の和室から成っており、さながら昔の学生下宿である。

 占有者は一人を除き買受人に対抗できない賃借人であるので、競売によって全戸明渡の見通しが付き易くなったと言える。そもそもこの物件の土地所有者は相続によって5人の共有名義となっており、賃借人明渡交渉もままならず任意売却がなされぬまま競売に付されたと考えられる。

 この物件の売却基準価額は7967万円であったが、これに対し入札が38本あり売却基準価額の約1.9倍の最高価1億5000万円にて法人が落札していった。おそらくは更地化を図り再販するのであろう。競落水準は明渡のコストや解体費用を考慮せず1坪当たり約200万円であり、これは正面路線価(1坪約129万円)の55%増しに相当する。先に述べた明渡や解体のコストを考えればさらに水準は高い。

 それでもこの水準で競落できるのは、やはり金融機関が事業者などに対しては融資をしているということであろう。「かぼちゃの馬車」「スルガ銀行」問題から個人の不動産投資に対する融資は金融機関が締めているようであるが、事業者に対する融資はあまり変化がないのだろう。事業者の強気の仕入れ、入札が続いている。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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