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東京競売ウォッチ

2010年5月17日

第41回阿佐ヶ谷の借地権付建物

 4月22日開札では、対象物件にすべて入札があり、100%売却であった。

 このところ特別売却に回る物件はかなり少なくなってきている。そんなこともあって、東京地裁では特別売却物件の売却期間をこの4月より短縮している。従来、開札日の翌開庁日から2週間であったが、今般大幅に短縮され、5日間となった(閉庁日を除く)。

 また、4月22日の入札状況を見てみると、この日、売却基準価額を下回って競落されたのは、全70物件のうちわずか2物件であり、入札が最低の1本という物件は1物件のみであった。

 その1物件についていうと、JR中央線「阿佐ヶ谷」駅徒歩14分に立地する借地権付建物であった。建物は築24年の木造2階建て、延べ約32坪で、借地は約45坪ある。しかし、借地については敷地延長の地形であり、しかも路地状部分の幅が2m未満であるため、現状のままであれば、建築確認が取得できず、再建築ができない。

 さらに、この物件には目的外の建物が建設されており、買受後のそれらの処理が必要である。当然借地であるので、底地所有者との土地賃貸借契約の名義変更も必要である。

 この物件の売却基準価額は829万円であったが、これに対し入札は1本で、最高価663万円にて落札されていった。これは正に入札可能最低ラインである買受可能価額ちょうどであった。

 このところこういった借地権物件や、再建築不可建物にも入札があるケースが多い。これらはおそらく落札後、再販売する目的の落札ではなく、賃貸利用、特に戸建であればシェアハウスのような、共同生活住宅用への転用目的の場合が多いように思う。競落水準が低く、初期投資も少ないことが大いに魅力となっているようだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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