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東京競売ウォッチ

2018年8月7日

第425回 借地権付建物の換価競売!

 競売における借地権付建物は多くの場合建物が古い場合が多い。それは競売に付されるほどの状況では建替えなどに手が回らないことが多いからである。しかし中には平成初頭に建替えられた物件もあり、そういった物件は建替えや改築を要さず商品化できるので入札も多い。

 7月19日開札では東武伊勢崎線「曳舟」駅徒歩約8分に立地する鉄骨造で築25年の借地権建物に13本の入札が集まった。この物件の競売は共有者の共有物分割訴訟を経由して競売に付された。申し立てたのは法人で、公売によりその共有持分を競落している。おそらくは共有者の相手方と互いの持分の売買について協議したところ纏まらなかったか、地主の名義変更条件が申し立て共有者と折り合わなかったことで競売に付したのだろう。

 この建物は3階建の居宅で延床面積約71坪と大きく、共同住宅としてもコンバージョン出来そうな物件である。借地権対象の敷地は約46坪で地代は(ほぼ相場並みの)月額46250円である。この物件の売却基準価額は2181万円であったが、競落したのは申し立てた共有者である法人で競落価格は4140万円であった。

 ところでこの地主は賃貸借契約に地主の借地権の優先譲受権条項を設けている。地主は借地権取得に意欲があるわけで、今般の競落にあたっては譲受許可を容易に競落人に与えないように思う。競落人が裁判所に代諾許可を申し立てたところで介入権を行使し、借地権を入手しようとしそうだ。一方でそれでも競落人は損失が出ない水準を練って競落価格を設定したのだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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